世界最大のECサイトを運営するAmazonでは、日々大量の商品を自社倉庫からユーザーに向けて発送しており、倉庫作業を効率化するために自律走行ロボットを使用した物流システム「Amazon Robotics」も導入されています。一方、ロボットと並行して人間による作業も行われていますが、その劣悪な労働環境はたびたび問題視されています。そんなAmazonが、単調な作業になりがちな倉庫労働者の退屈を紛らわせるため「ゲーム」的なシステムを導入していることが明らかとなりました。
ワシントン・ポストによると、Amazonのいくつかの倉庫ではピッキングや棚に商品を詰め込む作業を行う労働者に対し、独自開発したゲームを提供しています。倉庫のワークステーションにある小さなスクリーンにゲームが表示されており、労働者が行うタスクの達成度によって、ゲーム内のポイントがアップしたり特典が送られたりするシステムになっているとのこと。
ゲームのソフトウェアプログラムは現実の倉庫労働者が行うべきタスクと連動しており、労働者はゲーム内のランクなどを他の労働者と競い合うことが可能。Amazonの実験的な試みは、低スキルな単純作業労働者の離職率を下げることが目的となっています。
労働者に対してゲーム的なシステムを与えて離職率を下げる試みは、UberやLyftといった配車サービス企業でも導入されています。UberやLyftでは「1週間に60回以上客を乗せる」「1週間に20マイル(約32km)以上走行する」といった目標を設定し、目標をクリアしたドライバーには現金報酬を与えるなどして、ドライバーのやる気をアップさせているそうです。
企業のゲーム的システム導入のコンサルタント業務を行っているGabe Zichermann氏は、アメリカの小売業者であるターゲット・コーポレーションはゲーム要素によってレジの通過速度をアップさせたほか、デルタ航空は予約受付の訓練にゲーム的システムを役立てたと述べています。
Zichermann氏は、ゲーム的システムが大きな成功を収めるのは「退屈な労働をゲームに置き換える場合」だと語り、退屈さをわずかにでも紛らわせることが、労働者の幸福を後押しすると主張しています。その一方で企業が導入したゲームのアルゴリズムについて労働者に周知されないため、ゲームを隠れ蓑にして労働者に課すタスクを増やすことも可能だと認めました。たとえば以前は20の労働で得られていた報酬が、ひっそりと22の労働、25の労働と報酬獲得に必要なタスクを増やし、労働者により多いタスクを遂行させることができてしまうとのこと。
一方で職場のゲーム化について研究するゲームデザイナーのJane McGonigal氏は、労働にゲーム的要素を持ち込むことにはリスクも伴うと指摘。「同僚とゲームについて競い合い、楽しめるのはほんの短い期間です。同僚に対して自分が負け続けるようになれば楽しみは減り、タスク遂行にとって逆効果になる可能性もあります」と述べました。
Amazonは2017年末からシアトル郊外やマンチェスター近郊など、5つの倉庫でゲームシステムを導入しているとのこと。労働者がゲームに参加するかどうかは任意であり、Amazonは労働者のゲーム進行度によって従業員評価を行わないとしています。
実際にAmazonの倉庫で働いていた匿名の人物によれば、確かにゲーム的要素は単調な作業の退屈さを紛らわせる効果があった模様。「MissionRacer」「PicksInSpace」「Dragon Duel」「CastleCrafter」といった名称の倉庫用ゲームは、スーパーマリオブラザーズのような初期の任天堂製ゲームに似た単純なグラフィックを持ち、ゲームで高い実績を挙げるとポイントサイトのサイトやAmazonの商品が買える専用通貨などの報酬が得られたと元労働者は証言しました。
2019年05月23日 12時05分
https://gigazine.net/news/20190523-amazon-turned-work-into-game/
ワシントン・ポストによると、Amazonのいくつかの倉庫ではピッキングや棚に商品を詰め込む作業を行う労働者に対し、独自開発したゲームを提供しています。倉庫のワークステーションにある小さなスクリーンにゲームが表示されており、労働者が行うタスクの達成度によって、ゲーム内のポイントがアップしたり特典が送られたりするシステムになっているとのこと。
ゲームのソフトウェアプログラムは現実の倉庫労働者が行うべきタスクと連動しており、労働者はゲーム内のランクなどを他の労働者と競い合うことが可能。Amazonの実験的な試みは、低スキルな単純作業労働者の離職率を下げることが目的となっています。
労働者に対してゲーム的なシステムを与えて離職率を下げる試みは、UberやLyftといった配車サービス企業でも導入されています。UberやLyftでは「1週間に60回以上客を乗せる」「1週間に20マイル(約32km)以上走行する」といった目標を設定し、目標をクリアしたドライバーには現金報酬を与えるなどして、ドライバーのやる気をアップさせているそうです。
企業のゲーム的システム導入のコンサルタント業務を行っているGabe Zichermann氏は、アメリカの小売業者であるターゲット・コーポレーションはゲーム要素によってレジの通過速度をアップさせたほか、デルタ航空は予約受付の訓練にゲーム的システムを役立てたと述べています。
Zichermann氏は、ゲーム的システムが大きな成功を収めるのは「退屈な労働をゲームに置き換える場合」だと語り、退屈さをわずかにでも紛らわせることが、労働者の幸福を後押しすると主張しています。その一方で企業が導入したゲームのアルゴリズムについて労働者に周知されないため、ゲームを隠れ蓑にして労働者に課すタスクを増やすことも可能だと認めました。たとえば以前は20の労働で得られていた報酬が、ひっそりと22の労働、25の労働と報酬獲得に必要なタスクを増やし、労働者により多いタスクを遂行させることができてしまうとのこと。
一方で職場のゲーム化について研究するゲームデザイナーのJane McGonigal氏は、労働にゲーム的要素を持ち込むことにはリスクも伴うと指摘。「同僚とゲームについて競い合い、楽しめるのはほんの短い期間です。同僚に対して自分が負け続けるようになれば楽しみは減り、タスク遂行にとって逆効果になる可能性もあります」と述べました。
Amazonは2017年末からシアトル郊外やマンチェスター近郊など、5つの倉庫でゲームシステムを導入しているとのこと。労働者がゲームに参加するかどうかは任意であり、Amazonは労働者のゲーム進行度によって従業員評価を行わないとしています。
実際にAmazonの倉庫で働いていた匿名の人物によれば、確かにゲーム的要素は単調な作業の退屈さを紛らわせる効果があった模様。「MissionRacer」「PicksInSpace」「Dragon Duel」「CastleCrafter」といった名称の倉庫用ゲームは、スーパーマリオブラザーズのような初期の任天堂製ゲームに似た単純なグラフィックを持ち、ゲームで高い実績を挙げるとポイントサイトのサイトやAmazonの商品が買える専用通貨などの報酬が得られたと元労働者は証言しました。
2019年05月23日 12時05分
https://gigazine.net/news/20190523-amazon-turned-work-into-game/