https://mainichi.jp/articles/20210628/k00/00m/040/206000c
毎日新聞 2021/6/28 19:57(最終更新 6/28 20:26) 987文字
4年前の九州北部豪雨で決壊し3人が犠牲になった福岡県朝倉市のため池。壁面をコンクリートで補強する防災工事が6月に終わった=同市で2021年6月17日、今野悠貴撮影
全国に大小約16万カ所ある農業用ため池のうち、豪雨や地震などが起きれば決壊し、住民や住宅に被害が出る恐れがあるために防災工事が必要と判断されたため池が少なくとも5059カ所あることが、毎日新聞の47都道府県へのアンケートで明らかになった。農家の減少で維持管理が十分でないため池が増えていることもあり、全国では過去10年で約400カ所の決壊が起きているが、河川や高潮など他の水害に比べ対策は遅れている。
ため池の決壊を巡っては、2011年の東日本大震災で福島県の8人が、17年7月の九州北部豪雨で福岡県の3人が犠牲になり、7月6日で発生から3年を迎える18年の西日本豪雨でも広島県の女児1人が亡くなった。一般に土でできているため池の堤体(堤防)は維持管理を怠ると崩れる危険があり、農林水産省によると、09〜18年度に395カ所のため池が決壊した。
防災工事が必要なため池(上位都道府県)
西日本豪雨を受け国は18年、仮に決壊すれば周辺に被害が出る恐れのある「防災重点ため池(現在は防災重点農業用ため池)」の選定基準を見直し、100メートル未満に住宅や公共施設があるなど基準を明確化。従来より規模の小さなため池も対象にした。さらに20年、都道府県に対し、堤体にひびが入っているなど、防災工事を施さないと実際に決壊する危険がある防災重点農業用ため池を洗い出し、21年3月末までに防災工事推進計画を策定するよう求めた。
アンケートによると、21年3月末時点の防災重点農業用ため池は全国で計5万1205カ所。このうち、防災工事推進計画を策定して防災工事を実施または実施予定(ため池の貯水機能をなくす廃止工事を含む)のため池は計5059カ所だった。
ただし、調査が完了していない自治体もある他、島根県は「非公表」、埼玉・熊本両県は「未定」と回答しており、総数はさらに膨らむ見込みだ。ため池自体が西日本に多く、回答を得られた中で工事が必要なため池の数が多かったのは@岡山県550カ所A兵庫県422カ所B山口県400カ所――の順だった。
九州大の矢野真一郎教授(河川工学)は「農業の衰退で管理が行き届かないまま老朽化した農業用ため池が全国各地にあるが、河川に比べて浸水リスクが知られておらず、対策も後回しにされてきた。『危険なため池』が地域にないか確認した上で、豪雨の前に浸水時の避難行動を確認すべきだ」と指摘する。【今野悠貴】
毎日新聞 2021/6/28 19:57(最終更新 6/28 20:26) 987文字
4年前の九州北部豪雨で決壊し3人が犠牲になった福岡県朝倉市のため池。壁面をコンクリートで補強する防災工事が6月に終わった=同市で2021年6月17日、今野悠貴撮影
全国に大小約16万カ所ある農業用ため池のうち、豪雨や地震などが起きれば決壊し、住民や住宅に被害が出る恐れがあるために防災工事が必要と判断されたため池が少なくとも5059カ所あることが、毎日新聞の47都道府県へのアンケートで明らかになった。農家の減少で維持管理が十分でないため池が増えていることもあり、全国では過去10年で約400カ所の決壊が起きているが、河川や高潮など他の水害に比べ対策は遅れている。
ため池の決壊を巡っては、2011年の東日本大震災で福島県の8人が、17年7月の九州北部豪雨で福岡県の3人が犠牲になり、7月6日で発生から3年を迎える18年の西日本豪雨でも広島県の女児1人が亡くなった。一般に土でできているため池の堤体(堤防)は維持管理を怠ると崩れる危険があり、農林水産省によると、09〜18年度に395カ所のため池が決壊した。
防災工事が必要なため池(上位都道府県)
西日本豪雨を受け国は18年、仮に決壊すれば周辺に被害が出る恐れのある「防災重点ため池(現在は防災重点農業用ため池)」の選定基準を見直し、100メートル未満に住宅や公共施設があるなど基準を明確化。従来より規模の小さなため池も対象にした。さらに20年、都道府県に対し、堤体にひびが入っているなど、防災工事を施さないと実際に決壊する危険がある防災重点農業用ため池を洗い出し、21年3月末までに防災工事推進計画を策定するよう求めた。
アンケートによると、21年3月末時点の防災重点農業用ため池は全国で計5万1205カ所。このうち、防災工事推進計画を策定して防災工事を実施または実施予定(ため池の貯水機能をなくす廃止工事を含む)のため池は計5059カ所だった。
ただし、調査が完了していない自治体もある他、島根県は「非公表」、埼玉・熊本両県は「未定」と回答しており、総数はさらに膨らむ見込みだ。ため池自体が西日本に多く、回答を得られた中で工事が必要なため池の数が多かったのは@岡山県550カ所A兵庫県422カ所B山口県400カ所――の順だった。
九州大の矢野真一郎教授(河川工学)は「農業の衰退で管理が行き届かないまま老朽化した農業用ため池が全国各地にあるが、河川に比べて浸水リスクが知られておらず、対策も後回しにされてきた。『危険なため池』が地域にないか確認した上で、豪雨の前に浸水時の避難行動を確認すべきだ」と指摘する。【今野悠貴】