>>911 コンビニエンスストアといえば、ホームレスの男達が、競い合って奪う、
食料調達基地として、この世界に知られている。
品出しの時、店員達はトラックに集まり、制服に着替え、新しいモノを仕入れる。
古い食料品は、賞味期限が切れたら売れないから、使い捨てで、ゴミとして出される。
俺はいつもそれが狙いだ。
捨てられている食料品の、できるだけ期限が過ぎて間もないのを10数個ほど、
ごっそりさらってダンボールに持ち帰る。
そして、深夜、俺一人の食事が始まる。
俺はもう一度、拾った弁当のフタを開け、中でかっさらってきたアジシオをばら撒き、
ウォーッと叫びながら、白米の海の中を箸でかき回す。
味付けされた弁当は、飯の臭いがムンムン強烈で、俺の食欲を刺激する。
胃袋の中の時計は、もうすでに痛いほど響いている。
白米の中に顔を埋める。うめぇ。
肉臭、野菜臭や、期限切れ賞品特有の酸っぱい臭を、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。
うめぇぜ、ワッショイ! お弁当ワッショイ!と叫びながら、手づかみでかきこむ。
見比べ、一番色が白いおにぎりを主食に選ぶ。
そのおにぎりには、コンブの染みまでくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
そのおにぎりを作ってた奴は、しなびた工場で、リストラ寸前で、40代の、
低所得野郎だろうと、勝手に想像して、鼻と口に一番うまい部分を押し当て、
思いきり嗅ぎながら、おにぎりもったいないぜ!俺が食ってやるぜ!と絶叫し、
歯をいっそう激しく動かす。
他のおにぎりは、非常食として置いておくことにして、
低所得野郎のおにぎりを口に銜えながら、ウオッ!ウオッ!とノドにつめながらアゴを動かしまくる。
そろそろ限界だ。
俺はゴミ袋から烏龍茶を引き出し、おにぎりで一杯の口中に、思いっきり流し込む。
どうだ!うまかったか!俺は腹いっぱいだぜ!と叫びながら嚥下し続ける。
本当に三日ぶりの食事で、ムチャクチャ気持ち良い。
低所得野郎のおにぎりは、俺の胃液でグチョグチョに消化される。
低所得野郎、貴様の努力は報われたぜ!
俺の食事が済んだあと、他の弁当とまとめて、ビニール袋に入れダンボールにしまい込む。
またいつの日か、コンビニで食料を手に入れるまで、オカズとしてしのぐ。
ダンボールにはそんなビニール袋が一つしかないんだぜ。