経済学を学問として分析し、世界に大きな影響を与えた4人の経済学者を取り上げます。まず最初は近代経済学の父と呼ばれているアダム・スミスです。
彼が1776年に発表した『国富論』は、世界経済に大きな影響を与えました。翻訳がいくつか出ていて、『諸国民の富』という日本語訳もあります。
『国富論』という題名なくらいですから、アダム・スミスは私たちにとってそもそも富とは何か、何が富に当たるのか考えました。そしてこう定義しています。
「富とは国民の労働で生産される必需品と便益品」
生活必需品があってこそ富ですよね。これがなければ非常に貧しいことになります。便益品というのは、言ってみればやや贅沢をするものです。
これを合わせて消費財と呼びます。これこそが富であると考えたのです。なぜアダム・スミスはこのような考え方をしたのでしょうか。
彼は当時最も一般的な経済の考え方であった「重商主義」を批判したのです。
重商主義では、輸出によって金や銀などの貴金属が国に入ってくる、この貴金属こそが富だと考えます。
輸入をすると支払いに貴金属を使うので、国から貴金属が出ていってしまう。だから輸入は国を豊かにしないと考えます。
つまり、輸出によって貴金属をため込むことが国を豊かにし、輸入は国の富を減らすということです。アダム・スミスはこの考えを否定したのです。
彼はこう考えました。輸出をすることによって国に貴金属が入ってくることはもちろんいいことだ。
一方で、その貴金属を使って海外からいろいろなものを買う、すなわち輸入をする。
輸入によって生活必需品や便益品などさまざまな消費財が国内に入ってきて、国民の生活をより豊かにする。
だから輸出だけでなく、輸入によっても私たちの暮らしは豊かになる、これこそが富だということです。
http://bizacademy.nikkei.co.jp/culture/b-keizai/article.aspx?id=MMACzm000009052012