「高齢の親を子が介護」するのとは反対に「高齢の親が子の面倒を見る」という家族も増えている。
80代の親と、引きこもりが長期化する50代の子供が暮らす世帯が社会から孤立し、生活に困窮──そんな「8050問題」が新たな社会問題となっている。
無職の子供が親の年金や貯蓄に依存しているケースが多く、親が亡くなったり介護が必要となったりすると生活は破綻する。最悪の場合、親子関係がこじれて殺人事件にまで発展する事例も出てきている。
もはや“レアケース”とはいえない。働き盛りとされる40〜50代の「失業者」は72万人。
さらに、非正規労働の転職の失敗や親の介護などで働けない状態が長く続き、求職活動をしていないために雇用統計の数字には反映されない「ミッシング・ワーカー(消えた労働者)」は103万人に上る──。
そんな実情を伝えたNHKスペシャル(6月2日放送)も話題となった。
関西在住のAさん(62)も他人事ではないという。
「35歳の息子は3年前に非正規で働く職場でリストラに遭い、以降はアルバイトで食いつなぐ日々。それも長続きはせず、次第に自宅に引きこもりがちになっている。
今なら生活費は私の蓄えや妻のパート代から賄えるが、今後もこの状態が続くと、私にも持病があるし、夫婦の老後資金も最低限のものしかないので、家族で全く先が見えなくなります……」
高齢者問題に詳しいシニアの生活アドバイザー・横井孝治氏はこう話す。
「総務省の統計によると20〜30代の失業者は76万人。この人たちはいわば、将来8050問題を深刻化させる予備群です。失業が長期化する最大のリスクは親の介護。
真面目な人ほど、“自分がやらなければ”とつきっきりの同居介護になり、特に相談相手の少ない人や一人っ子は『引きこもり+介護』の状態に陥りやすいのです」
そうならないために、“予備群”の子を持つ親はどうするべきなのか。
「まずは自分が元気なうちに、要介護状態になった場合、“お金はどれだけ残せるのか”“どんな社会保障を受けられるのか”などを子供と話すこと。
子供が10年、20年後の経済状態を想像して、状況を自覚させることが大切だと思います」(横井氏)
袋小路に陥ってからでなく、「6030」のうちから、手を打つ必要があるのだ。
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