ワタリガニ、震災契機に漁獲激増 新たな名物に
2018年11月18日 10時44分
菱形のオリーブ色の甲羅に、大きなはさみ。素早く泳げるオールのような後ろ脚−−。
東日本大震災後、県内で水揚げされるワタリガニ(ガザミ)が爆発的に増加している。宮城の新たな名物になりつつあるワタリガニの謎と魅力に迫った。
ワタリガニは体長約15センチで、温かい水温を好む。海岸から約30メートルほどの浅場で生活し、冬は海底の砂泥に潜り冬眠する。
その名にふさわしく、へらに似た脚を巧みに使って泳ぐ姿がかわいらしい。
愛知県や福岡県など関東以南で多く収穫され、甘みのある身や濃厚なミソが人気で、みそ汁や鍋の具として親しまれている。
宮城県水産技術総合センターによると、同県内のワタリガニの収穫量は2010年まで4トン以下だった。
だが、震災が起きた11年に9トン、12年には28トンを水揚げ。そして15年には565トンと激増し、収穫量全国1位に輝いた!
その後もどんどん収穫量を伸ばしている。一体、なぜ?
同センター環境資源チームの山崎千登勢技師は「震災の津波によって、海底の砂泥の分布が変化したことが一因」と分析する。
津波の引き波で、陸上からさらわれた泥がワタリガニの生息に最適な浅瀬に広がった。
地球温暖化の影響で水温が上昇傾向にあることも影響し、仙台湾での越冬が可能になったとみられる。
稚ガニの生息も確認されており、山崎技師は「今後もこの状態が維持されるなら宮城の新たな特産物になり得る」と話す。
今年、同県内では広域で長期にわたり貝毒が発生。
3月末からアカガイを出荷できなくなった漁業者の一部はワタリガニを収穫して収入を支えた。
県は今春からワタリガニの生態調査に着手。個体の分布やエサの種類などを調べ、今後の安定供給にもつなげたい考えだ。
https://mainichi.jp/articles/20181118/k00/00e/040/188000c