野党が追及する専門家会議の「議事録未作成」…基準定めたのは民主党政権 意見採用は政治家の役割だ
https://www.zakzak.co.jp/smp/soc/news/200605/pol2006050001-s1.html
新型コロナウイルスの政府専門家会議が議事録を作成していないと報じられた。
まず、現状がどうなっているのかを見てみよう。
新型コロナウイルス感染症対策本部と新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催状況、資料、議事概要は、
官邸のウェブサイトで公表されている。
対策本部は1月30日から5月25日まで36回開催され、
専門家会議は2月16日から5月29日まで15回開催されている。
議事概要について、対策本部は3月1日開催の第16回まで、専門家会議は
3月9日開催の第6回までそれぞれ公表されている。
なお、対策本部は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき設置され、
メンバーは首相を本部長として閣僚である。専門家会議は医学的な見地からの助言を行うために設置され、
座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長は尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長などとされ、
必要に応じ、その他関係者を出席させるとされている。
議事概要の公表が遅れていることについて、政府は、各会議の参加者の全員に確認してからでないと
公開できないので時間がかかっていると説明している。
筆者が現役の官僚の時には、秘密保持のために議事概要について手間がかかるやり方をしていた。
委員のところに直接に出向き、議事概要のコピーを渡さずに、その場でチェックしてもらっていた。
今はどのように行っているのか知らないが、コロナによる外出自粛もあったなかで、
確認やチェックに時間がかかったのかもしれない。
「議事録」と「議事概要」の差は、基本的には発言者を特定するかどうかである。
専門家会議で議事録が作成されていないと報道されているが、正確にいえば、
発言者が特定されない議事概要が作成されているが、その公表が昨今の事情で遅いということになる。
ここで問題は、なぜ議事録ではなく議事概要なのかに絞られる。官房長官の記者会見によれば、
専門家会議は政策の決定や了解に関わらないので発言者を特定しない議事概要にすることとし、
初回会合で委員の了解を得たという。
この手続きは、東日本大震災後の2011年4月1日に民主党政権で決定された
「行政文書の管理に関するガイドライン」に定められたものだ。
専門家会議は助言するにすぎないので、発言者が特定されない議事概要の作成とすることで問題はない。
一部野党が攻めているようなマスコミ報道であるが、そのうち「ブーメラン」になりはしないか。
専門家会議ではいろいろな意見が出ても、それらのうち何を採用するかは、政治家の対策本部の役割だ。
政府は批判を受けて、専門家の了解が得られれば、
発言者を一部明示するなどの対応を含めて検討に入ったと報じられている。
ただ、専門家会議での発言者を特定すると、新元号の制定時にあったように、
マスコミの取材攻勢が特定の研究者の研究活動に迷惑になりうることもある。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)