トレンドは激辛&強炭酸「刺激強め系」人気のなぜ ストレス社会ゆえ?SNS時代の戦略も
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食べ物と飲み物の最近のトレンドは「激辛」と「強炭酸」―。近年、飲食時に刺激の強いものが好まれる傾向が際立っている。京都の漬物店も激辛トウガラシ入りの漬物を発売。「刺激強め系」が人気を集める背景には、ストレス社会の存在や、リピーター獲得に向けたSNS時代の宣伝戦略も浮かび上がる。
タカノツメの10倍と20倍の辛さのトウガラシがそれぞれ入った「激辛」と「超激辛」の味すぐき、しその実漬、お茶漬胡瓜―。
漬物製造の大安(京都市左京区)は、「意欲作」の激辛トウガラシ入りの漬物を8月限定で京滋の13店舗と通信販売で販売している。昨夏にも限定販売したところ、20〜30代を中心に反響があり、第2弾として取扱店を増やして展開する。発案した辛い物好きの社員薬丸綾子さんは「漬物になじみの薄い若い人たちにも食べてほしい。白ご飯やお酒のお供で味わって」と期待する。
カップ焼きそば「ペヤング」の「まるか食品」(群馬県伊勢崎市)は、ペヤングの激辛シリーズを2012年から順次開発し、4作目「獄激辛やきそば」を今年2月に発売。「泣けるほど辛い、究極の辛さ」が売りで好評という。
激辛は地域のにぎわいづくりにも活用されている。向日市の「京都向日市激辛商店街」では、さまざまな辛い食べものを提供。激辛グルメ日本一を決める大会「KARA―1グランプリ」も毎年催す。清水幹央副会長は「『激辛』は会話のきっかけになり、エンターテインメント性がある」と話す。
一方、飲料では無糖の炭酸水が躍進する。強炭酸の「ウィルキンソン」(アサヒ飲料)はブランド全体の19年の販売数量が2694万箱と、08年から15倍以上に伸長した。今年は新型コロナウイルス感染防止の「巣ごもり」で、自宅での飲酒用の割り材としての需要も急増。8月は前年同期比で3割増産する計画だ。「強炭酸の刺激がクセになり、リピーターを獲得した」(広報)とする。
舌がしびれるような飲食を消費者が好むのはなぜなのか。
「どちらも味覚より痛覚に作用しているから」とみるのは、日本味覚協会の水野考貴代表だ。「ストレス社会で強い刺激による快感を多くの人が欲している」とした上で、過激さが求められがちなSNSの性質も指摘。「メーカー側にとっても特徴的な商品はインスタグラムなどで紹介してもらいやすい利点がある」と分析している。
今の日本は「第4次激辛ブーム」のただ中にある。そう強調するのは、ホットペッパーグルメ外食総研の有木真理上席研究員だ。有木さんによると、激辛人気はストレス社会と密接に関わりながら、ブームの波は満ち引きを頻繁に繰り返している。
激辛ブームの火付け役の一つは、1984年に発売されたスナック菓子「カラムーチョ」(湖池屋)とされる。同時期に辛口の菓子が大量に売り出されて人気を博し、86年の新語・流行語大賞には新語部門の銀賞に「激辛」が選ばれた。
ブームがいったん下火になり、バブルが崩壊した後の1990年代には、タイや韓国料理の店が相次いで出店。エスニック色豊かな第2次ブームを呼び寄せた。
今につながる転換点になったのは、2000年代の第3次ブームだ。激辛トウガラシのハバネロが普及し、辛さのレベルが飛躍的に上がった。スナック菓子「暴君ハバネロ」(東ハト)が発売され、ラーメン店「蒙古タンメン中本」に行列ができた。
18年ごろに始まった第4次ブームでは、「しびれ系」と称される中華の調味料「花椒」を使った四川料理を食べ歩く「マー活」がはやったように、サンショウ、ワサビなど辛さのスパイスが多様化したのが特徴という。