https://news.yahoo.co.jp/articles/803d09cd676d9e3ed2cfb6f06b0a2e6227b57ad0
市民ランナーの「マラソン大会離れ」 定員割れ続出の背景に参加費大幅値上げ
コロナ禍の行動制限が落ち着きを見せ始めたことで、これまで中止されていた市民マラソンの開催が次々と発表され、その申し込みが始まっている。だが、そこで異変が起きている。出場希望者が減少しているというのだ。
「10月24日まで募集をしていた『大阪マラソン2023』の申し込みが、2万8620人(一般枠)の定員に達しませんでした。そもそも、当初は9月に締め切りだったのが、希望者が枠に対して約7000人少なく、急遽、2次募集をしていた。前回までの抽選倍率4倍超という人気が消え、ランナーたちの間で話題となっています」
大阪マラソンは日本陸連公認コースを有し、さらに、国内では24大会しか認められていない「AIMS」(国際マラソン・ディスタンスレース協会)の公認資格も有する。観光名所や大都会も疾走できる大規模大会でも、人が集まらないのが実情だ。
こうした例は、大阪マラソンに限った話ではない。前回大会まで毎年2倍ほどの抽選倍率だった沖縄県の「NAHAマラソン」は、前回大会(2019年)より1万人少ない2万人の定員設定にもかかわらず「報道されていませんが、2万人に到達しなかった」(大会関係者)という。また、例年4倍超の倍率だった「京都マラソン」も定員割れで、11月14日まで2次募集を開始している。長野県の「松本マラソン」は1万人定員だったが約5500人のエントリー(申し込み)に留まった。「奈良マラソン」は毎年必ず起きていた先着順受付による「クリック合戦」が起こらず、約2週間にわたり募集を行っていたことで話題になった。
こうした市民ランナーの“マラソン大会離れ”の背景に何があるのか。毎年大規模大会に出場していた40代男性ランナーはこう語る。
「コロナで大会が中止されている間に、若干、熱が冷めてしまったところもあります。そもそも私はそこまで本気で記録を狙うわけでもないし、後日、『なかなか当たらないあの人気大会を走ったよ』と仲間内で話題にできればいい程度なので、定員割れしているとなんだかテンションが下がって申し込む気がしなかった」
「受容できない値上げ」が参加者を減少させる
ある30代男性ランナーは、切実な事情を吐露する。
「コロナ前までは会社関係の人たちと誘い合って“恒例行事”のように大会に参加していたのですが、再開後は大会の参加費が大幅に上がっていてびっくりしました。ただでさえ値上げラッシュで生活が苦しくなっている中で、趣味のマラソンのために出費がかさむとなると、自分もキツいし、周りの人たちも誘いにくい……」
今年9月、著名ランナーの川内優輝氏がTwitter上で、市民マラソンの定員割れが相次いでいる理由について、アンケートを取ったところ、1万票を超える回答が集まり、「参加費が上がりすぎ」が45.3%でトップという結果になった(次点は「直前で中止の可能性があるから」)。こうした結果からも、各大会の参加費の値上げが、定員割れの大きな要因となっていることは間違いないようだ。
具体的に見てみよう。大阪マラソンは、通常開催された直近大会(2019年12月)では11500円だったエントリー費(必須の寄付等を含む)が、今回は1万9100円に値上げされている。NAHAマラソンは前回(2019年)8000円から1万2000円に、京都マラソンは前回(2020年2月)1万5000円から1万8000円に、松本マラソンは前回(2019年)1万800円+手数料だったのが1万2000円+手数料となっている。
ちなみに、参加費全国トップは東京マラソンの2万3300円(当選倍率非公表)、次点は横浜マラソンの2万1000円(同1.1倍)となる。
大会側が値上げする名目の多くは、コロナ対策や「安全に走ってもらうため」の警備費増大だ。
スポーツツーリズムに詳しい國學院大學人間開発学部健康体育学科准教授の備前嘉文氏は、「受容できない値上げが起きれば、市民マラソン大会の参加者は減る可能性は高い」と話す。備前准教授は参加費1万円の大会に出場したランナーに調査を実施し(2048人から有効回答)、値上げが起こった際に「高すぎる」と感じる金額は1万438円だという結果を導き出している。