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FX Forum | 2017年 06月 3日 18:51 JST 関連トピックス: トップニュース
尾河眞樹ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員・金融市場調査部長
[東京 3日] - ドル円相場はこのところ持ち合い相場が続いている。「三角持ち合い」は、昨年11月からとみるか、今年4月以降のパターンでみるかで多少ずれるものの、いずれにせよ値幅は次第に狭くなってきており、足元でドル円は110―113.50円程度のレンジ内にある。この持ち合いは7月中旬までには終わり、上下どちらかにブレークするだろう。
足元はどう考えてもネガティブな材料が多く、「リスク回避の円高」のイメージの方がしっくりくる。例えば、トランプ米大統領の「ロシアゲート疑惑」を巡る一連の報道、特に米連邦捜査局(FBI)のコミー前長官が米上院情報特別委員会で8日に証言を行うという新たな展開も懸念材料だ。同氏が、トランプ大統領に不利に働くような新事実を公開する可能性もゼロではなく、警戒感は高まっている。また、しばしばミサイル発射を繰り返している北朝鮮の動向にも注目が集まる。
ロイター/イプソスの世論調査によれば、トランプ大統領の支持率は5月22日に36.6%と、就任以降でみて最低水準を付けた。ニクソン大統領が「ウォーターゲート事件」で辞任に追い込まれた時の支持率が24%台。これに比べればまだ高いとも言えるが、ニクソン大統領は就任直後60%台の支持があったのに対し、トランプ大統領は同調査ではまだ一度も50%を超えておらず、就任以降ずっと支持率は低迷したままだ。
今後の「ロシアゲート疑惑」の動向次第では、一段と支持率が低下する可能性も捨てきれない。一国の首脳の支持率が低下した場合、国外を標的にするケースは政治の世界ではよくみられることだ。3月末から4月上旬にかけて、トランプ大統領の支持率がさまざまな調査で4割を割り込み始めたが、ちょうどその頃、4月6日には化学兵器を使用したとしてシリア・アサド政権に対する巡航ミサイル攻撃を実施。本件は共和党ばかりか野党民主党、米メディアなどからも支持を得た。
また、4月12日には、トランプ大統領が「ドルは強くなり過ぎている」と述べ、ドルが急落。4月20―21日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議直前の唐突なドル高けん制だっただけに、為替市場への影響は大きく、ムニューシン米財務長官も「長期的にはドル高が好ましい」と発言を修正するなど対応に追われた。
これらが支持率を意識したものだったかどうかは分からないし、5月の主要7カ国(G7)首脳会議では特にこうした発言はなかった。ただ、国際政治と為替相場が密接に関わっていることを踏まえれば、トランプ大統領の支持率がさらに低下した場合には、地政学リスクの高まりや唐突なドル高けん制発言などにより、急激に円高が進行する可能性に警戒が必要かもしれない。
<「恐怖指数」低下の背景に5つの要因>
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こうしたリスク要因を並べるにつけ、ドル円は三角持ち合いを下抜けする可能性の方が高いようにみえる。しかし、投資家の不安心理を示す指標とされるVIX指数(別名・恐怖指数)をみると、通常のレンジ(10―20)の下限を割り込んでおり、むしろ市場は「リスクオン」に傾いている。
背景には、以下の5つの心理的要因があるのではないだろうか。
1)手続き上、トランプ大統領が米議会で弾劾される可能性は低いとみられている
2)仮に辞任に追い込まれたとしても、次期大統領はペンス副大統領の可能性が高く、むしろトランプ大統領よりも信任が高いためマーケット・フレンドリーであるとの見方も多い
3)北朝鮮についても、米朝は当面にらみ合いの状態が続き、実際にどちらかが攻撃を仕掛ける可能性は低いとの見方が支配的(ちなみに、北朝鮮が5月29日に発射した弾道ミサイルが、日本の排他的経済水域内に落下したとの報道に対しても、金融市場は一切反応しなかった)
4)5月以降発表されている米経済指標が比較的良好であり、1―3月の景気減速は一時的であるとの認識が広がっている
5)一方で、米国ではインフレの伸びが緩慢で、金融政策は緩やかにしか引き締められないため、米株価にとって良好な環境が当面続くとみられている
(つづきはソースで)