しずく「はぁ…」
愛「あれ?どうしたの」
しずく「あ、愛さん」
愛「しずくーだめだよ?ため息なんてついちゃってさー楽しいが逃げてくぞー?」
しずく「あ、いえ、なんでも…」
愛「歯切れ悪いなー言って楽になっちゃえよー」
しずく「愛さんになら話してもいいかも知れませんね。話、聞いてもらえますか?」
愛「もち」
しずく「実は…今度のお芝居で部活で挫折して何もかも放り出して逃げちゃう女の子を演じるんですが、そのワンシーンをみんなの前で演じたらどうなるんだろうって想像しちゃって」
愛「あはは、かすみん泣いちゃいそー」
しずく「はい、私もそう思います。きっとかすみさんは逃げた私を涙目で追いかけてきてくれて必死で引き留めようとしてくれるんですが、今度やる役のセリフだよって言ったら安心半分怒り半分で泣いちゃうんだろうなって」
しずく「そんなかすみさんがたまらなくかわいいなって思えてしまうんです」
しずく「私、変ですよね?泣いてる親友の姿を想像してかわいいな、楽しいなって思ってしまうのは…」
愛「しずく…」
しずく「本当、嫌な子…自分で自分が嫌になる」
愛「…しずく、違うよ」
しずく「えっ…?」
愛「楽しいと思えるならしずくは間違ってないよ」
愛「愛さん思うんだ。きっと世界は楽しいことだらけで楽しいで満ちてるんだよ?それを我慢するなんてそれこそ間違ってるよ!」
しずく「愛さん…」
愛「それにね。愛さんは楽しいと思うから同好会抜けたんだよね。それできっとかすみん悲しんだと思うんだ。それをしずくが見て楽しんだんだよね?ほら!win-winでウェイウェイの関係じゃん!」
しずく「それじゃあかすみさんは悲しんだままじゃないですか」
愛「愛さんとしずくが楽しんでるんだよ?ここは民主国家だからきっとかすみんも楽しんでるよ。悲しみながら悦んでるよ!」
しずく「悲しみながら…悦ぶ…?そっか、そんな感情もあったんだ」
しずく「だからあの役は悲しんでるのに可哀想に見えなかったんだ…まだまだ勉強不足だな私」
しずく「ありがとうございます愛さん!演技の幅が広がった気がします!」
愛「あはは、よくわからないけどどういたしまして」
果林「あら、愛。しずくちゃんと何のお話をしてたの?」
愛「楽しいこと!」
果林「そう…」
後日
しずく「あ、愛さん!この間はありがとうございました!かすみさん、悦んでくれましたよ」
愛「そっかそっか。かすみん悦んでくれたかーしずくも楽しかったんだよね?」
しずく「はい!それでかすみさんをもっと悦ばせたくて愛さんに相談が…」
愛「そういう話なら愛さんにまかせろー」
愛「なんたって愛さんは…楽しいの天才だからね!」
その数日後、桜坂しずくは同好会を抜けた
しずく「どうすればかすみさんに悦んでもらえるでしょうか。今度やるライブを最高の舞台にしたいのですが」
愛「え?同好会って練習出来ないのにライブやるんだ」
しずく「はい。ライブといっても講堂の使用許可が降りないのでゲリラライブという形になってしまったのですが」
愛「あ、愛さんいいこと思いついた!」💡
愛「講堂が使えないってことは箱もそんなに大きいもの用意出来ないってことじゃん?同好会のライブ会場を愛トモのメンバーで埋めてさ…部のライブをぶつけて観客を引き上げさせれば」
しずく「かすみさんが悦びますね!」
愛「かすみんのことだから少なくなった観客にも精一杯パフォーマンスすると思うんだよね。涙堪えながら」
しずく「私が楽しいですね!」
しずく「あ、そこで私が同好会を抜けるというのはどうでしょうか」
愛「いいじゃんいいじゃん!きっとライブやってみんなの気持ち盛り上がってるところだと思うんだよね。ランジュになんて負けるかー、みんかでひとつになってがんばろーって!そこでしずくが抜けるってなったら…」
しずく「かすみさん大悦びですね!」
しずく「というわけで今日からこちらでお世話になりますね」
ランジュ「歓迎するわ、しずく」
果林「なんとなくこうなる予感はしていたわ」
栞子「私は意外だなと思いました。しずくさんは同好会の立ち上げメンバーですし、とりわけかすみさんと仲が良いように思えてましたから…」
愛「わかってないなー…しおってぃーわかってないよ」
栞子「えっ…?」
愛「だからこそだよ。そっちの方が楽しいもん」
栞子「すみません、よくわからないのですが」
ランジュ「ランジュはメンバーが増えて楽しいわ」
愛「例えばカリンとしずくが同好会抜けるってなったらどっちが楽しいと思う?」
果林「ちょっと愛!なんで私を引き合いに出すのよ」
栞子「そもそも楽しいとかそういう話ではないように思えるのですが…」
ランジュ「ランジュはスクールアイドル部に来てくれるなら誰でも大歓迎よ」
しずく「私ですよね。栞子さんが言ってたように同好会立ち上げメンバーですし、かすみさんとも仲がいいですし」
果林「まるで私が誰とも仲良くないみたいに言わないでくれる?私だってエマとか彼方とか仲良かったわよ」
愛「だってカリンはさーなんか妙に冷めたとこあるし、単独行動好きだし、抜けた理由だって…なんだっけ?」
栞子「あの…まるで話が見えてこないのですが」
ノリノリで提案する愛さんとウキウキで乗っかるしずくで草
果林「つまり愛はこう言いたいのよ。私としずく、どちらが同好会を離れたら残されたメンバーがより深い傷を負うかどうか。でしょ?愛」
愛「違うよー!どっちが抜けたら楽しいかだもん!」
果林「…同じことじゃない」
しずく「物語的にどちらが盛り上がるかと言った方が分かりやすいかもしれませんね」
栞子「わからない…」
ランジュ「ランジュは理解したわ。経営でも人を引き抜かれた時、その人が有能であれば有能なほど深刻なダメージを受けるわ。私にとって果林としずくは同じくらい有能よ!」
栞子「私には愛さんが言う楽しいが理解出来ないのですが…」
愛「わからないかー。しおってぃーは何かあるとすぐ初めてですとか言っちゃうからなー」
果林「まだまだお子様ってことかしらね」
しずく「こんな素敵な感情を知らないなんて可哀想…」
愛「よっしゃ!愛さんたちと一緒に楽しい探しするぞー!」
ランジュ「おー!」
果林「そうねぇ。せつ菜をディベートとも言えないような個人攻撃で生徒会長から降ろした時はどうだったかしら」
栞子「あれはちゃんとしたディベートだと思ってますよ?」
果林「えっ?」
しずく「えっ?」
愛「えっ?」
栞子「えっ?」
果林「…まぁいいわ。あなたは尊敬するせつ菜を自分の力で屈服させた。どう?気持ちよくなかったかしら?」
愛「楽しくなかった?」
栞子「???」
しずく「ボランティア説明会で同好会の皆さんが現実を目の当たりにした様子とかはどうでしょうか」
しずく「スクールアイドルフェスティバルを控え、ボランティアも1000人集めた。意気揚々と説明会に臨むもそれがその実100人にも満たなかった」
しずく「その時の皆さんの顔を思い出してください!何か思うところはありませんか?」
愛「楽しくなかった?」
栞子「いえ、悲しそうだなと。まぁあの時は100人くらいいただけも上々だったんじゃないでしょうか。私はもっと少なく見積もってましたし」
ランジュ「じゃあ、スクールアイドルフェスティバルで最後にステージに上がった時は?みんなに手を引かれて出てきたやつ」
ランジュ「私の友人がずっと裏方にいるなんてあり得ないと思って見てたけど最後に出てきてランジュ嬉しかったわ」
栞子「確かにあれは今でも鮮明に思い出せるほど楽しかったです」
ランジュ「でしょ!果林もしずくも栞子のこと分かってないわね。ランジュが1番栞子のこと知ってるのよ」
愛「ふーん…」