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かのん「…………」ズズッ
ある日、ある公園の
よくあるベンチに腰掛ける──私、渋谷かのん高校1年生
と
可可「……うーん、むにゃむにゃ……」
そんな私の膝元で眠る、同じく高校1年生 唐 可可……ちゃん。
かのん「うぅっ……流石にちょっと寒くなってきたかも」
かのん「上着の一枚くらい、持ってくればよかったなあ」
さて……この場に置かれた状況につきまして、既にお気付きの方もいらっしゃるとは思います。
いいや、そうでなくともきっと分かってくれるはず。
何故なら外は人気も少なくなってきて、現在進行形で私に密着している彼女の視界は真っ暗。
つまり、私を見ている人は誰もいないというわけで
となれば、その先は言うまでもなく
かのん「はあ、それにしても」
言うまでもなく……わかりますよね?
そう、私はここで────
かのん「暇だなあ……」
ただひたすらに、暇を持て余していた。
日常系 クーカーss
かのん「夕暮れからすは今日も鳴く」
完。
……というのは冗談で、話はこれより少し前に遡ります。
勿論、これとはタイトルのことではなく。
かのん「冒頭の部分から。というわけで早速いってみましょう」
かのん「尚このssは私、渋谷かのんの独白も時折り交えつつお送りいたします」
それでは引き続きどうぞ。
…………
さてさて事の発端は、いうほど大層なものではなく
ほんの些細な日常のワンシーンと共に
ちょっとした会話のやり取りからひとつ、またひとつと、積み重なったのです。
…………
カランカラン
可可「かーのーんー、来マシたよー!」
かのん「いらっしゃいクゥクゥちゃん、今日は空いてるから好きなところ座って」
可可「おぉ……貸し切りというやつデスか」
かのん「そうかも、まあただの偶然なんだけどね」クスクス
可可「ん、そうなんデスか? クゥクゥはツイていますね!」
かのん「ね。今日の運勢占いでもよかったのかな?」
可可「そういえば今日のクゥクゥの星座は1位! ……とまあその話はまた別として置いておきマショウ、それよりかのん!」
かのん「うん」
可可「今はかのんがこのお店の当番なんデスよね!?」
かのん「そうだよ、だから今日はこれまでのお礼も兼ねてクゥクゥちゃんにサービスしようかと思って」
可可「サービス?」
かのん「そっ、なんと全品半額です」
可可「えぇーー!!? いいんデスかそんなことをシテモ!!?」
かのん「大丈夫大丈夫、もう半分は私が払うってことで話は通してあるから」
かのん「でも全員分だと私の財布が持たないからクゥクゥちゃんだけにしたの」
かのん「特別にね、みんなには内緒だよ?」
可可「かのん……!! やっぱりかのんはスバラシイデス! 人格者デス!」
かのん「そ、それは褒めすぎ……かな」
可可「かーのーんー!」ダキッ
かのん「まーまー今はそれよりほら、ね?」
可可「?」
かのん「ご注文、お伺いしますよお客様」
可可「おっと、そういえばそうデシた」パッ
可可「それではまず記念すべき一品目は……」
かのん「うんうん」
可可「ナポリタンをお願いしマス!」
かのん「…………え?」
可可「日本の喫茶店ではナポリタンが定番メニュー! と聞いたことがありマス」
かのん「え?」
可可「え? は注文してマセんよ、かのん」
かのん「いや……えっと、なんて?」
可可「いえ、デスからナポリタンを」
かのん「うん……うん?」
かのん「……ナポリ?」
可可「ナポリ」
かのん「タン」ユビサシ
可可「クゥクゥです」
かのん「あ、これはどうもご丁寧に」ペコリ
可可「いえいえ、親しき中にもなんとやら……」
可可「ではなくてデスね」ズイッ
かのん「あっはい」
可可「かのん、今かのんが聞くべきなのは名前ではなくご注文デスよね?」
かのん「ごもっとも」
可可「ではお願いしマス、ナポリタン一つ」
かのん「えーっと、それは……ね」
可可「? どうかしたのデスか、かのん」
可可「さっきからずぅーっと、そわそわソワソワ」
かのん「どうも何も、どうしたものかと」
かのん「うーん……」
可可「んーぅ?」
かのん「……はあ、仕方ない」
かのん「あのね、クゥクゥちゃん」
可可「はい」
かのん「すごく言いにくいんだけど」
かのん「うちのメニューには載ってないんだよね、それ」
可可「それとは?」
かのん「だから、ナポリタン」
可可「…………」
可可「ない?」
かのん「はい」
可可「あのナポリタンデスよ?」
かのん「どのナポリタンだろう、探してみようか?」スッ
可可「ごけっこう、自分で見つけマス」ヒョイ
かのん「すみませんねえ、お手数おかけして」
可可「いえいえなんのなんの」パラパラ
可可「……」
パラパラ
可可「……」
パタン
可可「お邪魔しマシた」
かのん「いやいやいやいや」ガシッ
可可「なんデスか」
かのん「ちょっと待って」
可可「待ちマシたよ、最初の注文のくだりから。かなり」
かのん「そ、そうだけど」
可可「そうでしょう?」
可可「というわけでサヨウナラ」
かのん「待って待って! あまりにも引き際の決断が早すぎない!?」
可可「あんまり間延びさせるのもどうかと思いマシて」
かのん「そんな親切心があるなら冷やかさないでここに居てよ!」
可可「冷めたのはこちらの方デスが」
かのん「うっ……じゃ、じゃあ何か温まりそうなお食事でも!」
可可「ではナポリタンを」
かのん「ごめんなさい、私が間違ってました」
可可「やっとわかってもらえマシたか」
かのん「はい、ずるずると引き延ばしてすみませんでした」
可可「では改めておイトマを」
かのん「まあそれはそれとして!」ガシッ
かのん「まさか、その一品だけ頼みに来たってわけでもないよね? ね?」
可可「そもそもクゥクゥはかのんに呼ばれて来たワケデスが」
かのん「そう言わず話だけでも、すぐ終わるから!」
可可「かのん、勧誘の素質ありマスよ」
かのん「いやーあの頃はメンバーを集めるのにも苦労が……」
可可「怪しい宗教団体の」
かのん「……残念、うちは清廉潔白をウリにしているんです」
可可「必死に客を引き留めようとする姿はその真逆のようにも見えマスが」
かのん「うっ……と、とにかく!!」
かのん「ピッツァだけがイタリの名物料理じゃないように」
かのん「喫茶で食べられるのもナポリだけじゃーありませんよお客さん!」
可可「お断りしマス」
かのん「なんで!?」
可可「なんでって、クゥクゥはかのんの作ったナポリタンが食べられると思って楽しみにしていたんデスよ!!?」
かのん「えっ……あ、そうなの?」
可可「そうデス! だから今日もかのんがお店の手伝いをすると聞いて、ずーっとこの時間を待ちわびてマシた!」
かのん「じゃあ、半額セールは?」
可可「確かにそれも嬉しかったですケド! あくまでもついで! ついでなんデス!」
かのん「…つまり、私のナポリタンが本命だったと?」
可可「だからずっとそう言ってマス!!」
かのん「あっ、ふーん……なるほど、なるほどね」
可可「それがこの有り様デス! わかりマスかかのん! 今クゥクゥがどれほどがっかりしているのか!」
かのん「まあ、うん。だいたいは」
可可「その割にはひどく冷めているように見えマスが」
かのん「うーん、クゥクゥちゃんが熱くなってきたからちょっと冷静になれたというか」
かのん「……そんなに食べたいの?」
可可「モチロン」
かのん「そっかー……ふふっ、なるほどそっかー」
可可「なに笑ってるんデスか」
かのん「いやいやなんでも?」
可可「なんだか釈然としませンね」
かのん「なんでもないから、ほんと」
かのん「けどまあ、そうだなあー」ウーン
かのん「メニューに載ってないってだけで、材料さえあれば作れないことも……」
可可「本当デスか!?」
かのん「とりあえず揃えないことには始まらないから誰かに買い出しでも頼んで……っと」
可可「かのんが行かないんデスか?」
かのん「この時間帯は私しかいないし……あ、早速」ピロン
かのん「良かったねクゥクゥちゃん。すぐ来るって」
可可「誰が?」
かのん「恋ちゃん」
可可「よりによってレンレンですか……」
かのん「着払い+ショートケーキも付けるって言ったら秒で返事来たから」
可可「レンレン……」
かのん「さてと、恋ちゃんが来る前にちゃんと用意しておかないと……あ、その前に」
可可「?」
かのん「お水、お注ぎしましょうか?」
可可「……いえ結構、それより」
可可「アイスコーヒーをお願いしマス」
かのん「かしこまりました、お客様」フフッ
カランカラン
恋「はい、確かに受け取りました」
かのん「ごめんね恋ちゃん、使いっぱしりみたいなことさせて」
恋「いえ、困ったときはお互いさまですから」
かのん「そうだねー、お互いさま」ギュッ
恋「?」
かのん(おまけ、付けといたから)コソッ
恋(なるほど……誰にも言わない、それでいいんですよね?)
かのん(流石、話が早くて助かるよ)
可可「かのんーまだデスかー?」
かのん「はーいただいまー」
恋「では失礼しますね、あまり楽しみの時間を奪うわけにもいきませんから」
かのん「そうそう、早く頂かないと食感と風味が落ちるってものだからね」
恋「ゆっくり味わって食べますよ」
かのん「こっちは大急ぎで作らなきゃだけどね」
恋「そうでしたか、それはそれは」
かのん「いやーこうしたアウェイなオーダーを貰うことは中々なくてさー」
ポンポン
かのん「対応しようにもほんとに困ったもの……で」クルッ
可可「いーつーまーでー、立ち話しているんデスかー……!!」
かのん「あ、あはは……ほんとに、困ったねー、ねえ恋ちゃん?」
カランカラン
かのん「……何にも言わずに去りますか。あっ、そういう約束だったもんねそういえば。うん」
かのん「ナイス、お互いさまの精神」
可可「かーのーんー!!」
かのん「作る作る!! もう張り切って作っちゃう!」
20分後……
かのん「────というわけでお待ちどおさま、ナポリタンでございます」
可可「おぉー……ついに……! 待ちに待ったナポリタン……!!」
可可「かのんのお手製ナポリタン……!」
かのん「えへへっ…まあ自分で言うのもなんだけど、結構自信あるんだよねーこれ」
かのん「割と上手くいったというか? 初めてにしては、みたいな?」チラッ
可可「では早速……我吃了(いただきます)ーー!」カチャ
かのん「……あっはーい、どうぞ召し上がれー」
可可「……」アムッ モグモグ
かのん「ど、どうかな……?」
可可「う〜〜〜〜ん、好吃〜!!」
かのん「はおちぃ?」
可可「美味しいという意味デス!!」
かのん「へえ〜、美味しいの?」
可可「もう最高デス!」ニコッ
かのん「へえ〜、あっそんなに。そっかそっか、へえ〜、ふ〜ん」
可可「かのんも食べてみますか!?」
かのん「いやいや私はいいよ! クゥクゥちゃんのために作ったんだからクゥクゥちゃんが全部……」
可可「…………」モグモグモグモグ
かのん「全部……食べる気満々でなによりだね。うん」
カチャ……
可可「ふぅ〜、吃包了(お腹がいっぱい)〜……とてもスバラシイ料理でしタ」
かのん「そ、そこまで言われると逆に不安になっちゃうかも、クゥクゥちゃん褒めすぎじゃない?」
可可「いえ、かのんは何事もやればできる子なんデス!!」
かのん「建前にしても、そんな保護者みたいな……」
可可「建前、冗談ではありマセん! そうだ、この際なので新しくメニューにこのナポリタンを加えるというのはどうデショウ!?」
かのん「えぇ!? それこそ冗談でしょ! メニューに入れるってことは他のお客様にも出すってことだよ!?」
かのん「流石にそこまでの自信はないって! 無理無理無理!!」ブンブン
可可「そうデスか、残念デス……はぁ」
かのん「……あーっと、でも個人に提供するぶんなら、うん……オッケーな気もするけど」
可可「本当デスか!?」
かのん「でも、私がいるときだけね」
かのん「言ってしまえば専用メニューみたいな? クゥクゥちゃん専用、私限定って感じで」
可可「か、かのん〜……!!」
かのん「ま、その代わり、お金はちゃんと支払ってもらいますけど」
可可「……抜け目ないデスね」
かのん「しょうがないでしょ?」クスッ
かのん「損得勘定抜きで喫茶店が務められるかってね」
可可「わかりマシた!! 代金はちゃんと支払いマス! なので」
可可「早速材料の買い出しに出かけマショウ! さぁかのん!!」
かのん「はっや!! え、さっき食べたばかりじゃん!」
かのん「後日とかでしょこういうのって!」
可可「いいえ、クゥクゥは明日にでもかのんのナポリタンが食べたいのデス!」
可可「となれば、今日材料を揃えないと明日に間に合いマセん!」
かのん「でも明日も私がいるとは……ほら、学校もあるし。今日は休日だったからいいけど……」
可可「じゃあいてください!」
かのん「私の都合は!?」
可可「クゥクゥに合わせてくだサイ!」
かのん「そんな殺生な!!」
可可「お願いしマスかのん! 明日だけでいいんデス!」
可可「クゥクゥはこの味を忘れたくない! このままいつになるか分からない次を待つなんて……クゥクゥには出来マセン!!」
かのん「ま、またそんな聞く側が気持ちよくなるような響きのいい言葉を……」
ガバッ
可可「お願いしマス! かのん〜っ!!」
可可「一生、一生のお願いデスから〜っ……!!」
かのん「わ、私知ってるんだからね! そういうお願いは一生ものじゃないってこと!!」
可可「か〜の〜ん〜〜っ!!」
かのん「っ〜〜〜〜〜!!!」
かのん「──私の財布事情が……スケジュール大幅ロス……」
可可「思っていたより沢山買いマシたね、かのん」
かのん「まあ料理の練習とか色々しなきゃだし……ね。ははっ…………はあ」
可可「……飲みマスか? タピオカ」
可可「お金はクゥクゥが出しマスから」
かのん「……それはどうも」
可可「ほらかのん、ここの公園で少し一休みしまショウ。座って座って」
かのん「よいしょっと。はー疲れた」
可可「お疲れ様デス、かのん」
かのん「やっぱりこの時間帯は人が多くて……買い物にもひと苦労だよ」
可可「お昼時デスからね」
かのん「一応これでも2時過ぎなんだけどなあ……」
ズズッ
かのん「あー美味しい。タピオカって本当に種類増えたよね、専門店でもコンビニでも」
可可「ソデスネ」ズズッ
かのん「さっき寄ったとこ、どこだっけ? カフェオレがいい感じの甘さで美味しいし量もそれなり多いし、また行きたいんだけど」
かのん「クゥクゥちゃん覚えてない?」
可可「……うーーん……どうデショウ……」
可可「確か……あの……あれに名前が、似ていマシたね……」ウトウト
かのん「クゥクゥちゃん?」
可可「ちょっと失礼……距離を置きマス」ツツツ……
かのん「えっ」
可可「う〜ん、まあ、これくらいでいいデスかね……」
可可「ん」ポスン
かのん「…………はい?」
可可「はぁ〜落ち着きマスねえ、かのんの太ももは」
かのん「サラッと変態っぽいこと言うのやめない?」
かのん「え、っていうか何これ? ねえクゥクゥちゃんちょっと、ねえ」
可可「なんだか食べたら眠くなってきマシタ……あとはお願いします」
かのん「それにどう返事をしろと!?」
可可「…………ん」マル
かのん「ですよね! いや分かってたよ!? 分かってたけども!」
かのん「せめて私の口から何か聞いたりとかそういうっ……」
可可「……すぅ……すぅ……」
かのん「いりませんかそうですか。へえ〜」
可可「むにゃむにゃ……かのん〜……」
かのん「……まあいいや、私も疲れてたし」
かのん「ひと休み、ひと休み」ズズッ
可可「…………」スヤスヤ
とまあ、そんなこんながありまして
今もこういう考えを巡らせるくらい、ただただぽけーっと座っていたわけですが
その間に何もなかったかといえば、全くもってそうではなく
行く人行く人に注目されてはヒソヒソと、そのときの気恥ずかしさときたら
正直言って穴があったら入りたいくらいでしたけども、しかしかと言って
眼下の無垢な女の子を追い出せるわけもなく
かのん「──こうして今に至るわけですよっと、ねえクゥクゥちゃん?」
可可「……むにゃ……」
かのん「人の気も知らないでまあ」
かのん「はぁ……もう言ってもしょうがないかそれは」
かのん「さてと、それじゃあそろそろ」ソッ
かのん「ほらー起きてークゥクゥちゃん」ユサユサ
かのん「人通りも減ってきた頃合いですよー。起きてくださーい」サスサス
可可「ぅーん……」
かのん「回想も挟んでいい感じに時間も経ったんだから。ねえってば」ポンポン
可可「」スヤァー
かのん「そろそろ起きてくれないと、足がしびれて私が立てなくなっちゃうから。いやホントに」
かのん「許せる許せないにもキャパシティってものがあるから、ね?」ス……
可可「……うぅ〜ん……」ピトッ
かのん「あの、ほんとうに……」
かのん「ほんとうに、甘やかすの良くないと思うんだけど、ね」
……
カァー カァー
かのん「あぁー、気が付けば夕暮れかあ」ナデナデ
かのん「早いなあ、今日は」ナデナデ
可可「……くぅー……」
かのん「…………」
かのん「」スウー
かのん「 かーらーすー なぜなくのー からすはやーまーにー 」
かのん「 かーわいーい なーなーつーの こがあるかーらーよー 」
かのん「 かーわい かーわいーと かーらーすーは な く の 」
かのん「 かーわい かーわいーと なーくーんーだーよー 」
かのん「…………かぁ」
可可「なんデスかその歌? もっと聞かせてくだサイ」
かのん「童謡、どうよ?」
可可「スバラシイ歌声でした、おかげでスッキリこの通り」
かのん「私の歌声はモーニングコールじゃないんだけどね」
可可「あぁ、そういえば随分長いこと眠っていたような気がしマス」
かのん「それ気のせいじゃないから」
可可「オヤ? あっもうこんな時間デスか、そろそろ帰らなければいけマセンね」
かのん「はいはいそうだねその通りだね、うん」
可可「? かのん、なんだか足が辛そうデスね」
かのん「いやー素晴らしい寝顔だったよ、おかげでバッチリこの有り様」
可可「……なんか、スミマセン」
かのん「いいのいいの、結局ね、因果応報ってやつだから」
可可「? はあ……送っていきまショウか?」
かのん「いいよ、すぐ近くだし」
かのん「じゃあ、また明日ね」クルッ
可可「…………」
可可「かのん!」
かのん「ん?」
可可「クー」
かのん「……もう歌わないよ。サービス終了、配信停止」クスッ
かのん「次の実装をお待ちくださいなってね」ヒラヒラ
可可「…………カー」
─翌日
可可「 かーらーすー なぜなくのー からすはやーまーにー♪ 」
すみれ「なんなのよ、朝っぱらから童謡なんて」
可可「すみれ。童謡、どうよ?」
すみれ「面白くないわね」
可可「やっぱりそう思いマスか?」
すみれ「やっぱりって何よ」
ガラッ
かのん「へえ〜それつまらなかったんだ。へえ〜」
可可「い、いやこれはデスね……その」
千砂都「まあ面白いかどうかって聞かれたらね」
すみれ「ええ」
かのん「3−1……4−0……うん、だよね面白くない! 流そう流そう!」
すみれ「そもそもこの流れが意味わからないんだけど私は」
かのん「学生の会話にいちいち意味なんて求めてたら頭パンクしちゃうよ」
すみれ「またもっともらしいことを言う」
千砂都「でもさっきクゥクゥちゃんが歌ってた七つの子、あれは良かったよね」
可可「デスヨネ!」
かのん「はは、正当評価だとしてもこの扱いの違いっぷり、やっぱり歌だけなんだね私は」
すみれ「あなたはさっきから何を言ってるのよ」
かのん「軽はずみで言ったことに後悔してるとこかな」
すみれ「あ、そう」
千砂都「いつどこで覚えたの? それ」
可可「昨日家で覚えマシた! かのんが歌っているのを聞いて、それがとてもスバラシかったので!!」
千砂都「かのんちゃんが?」
可可「そうデス! 眠ってしまったクゥクゥに膝枕をしながらスバラシイ歌声で聞かせてくれたのデス!!」
かのん「ちょっとちょっと、クゥクゥちゃん?」
千砂都「膝枕?」
すみれ「何、昨日あなたたち一緒だったの?」
可可「はい、ナポリタンをご馳走になりマシタ! それもかのんの手作りを!」
かのん「いや、あの」
千砂都「え? でもナポリタンって、かのんちゃんが作ったところ見たことないような」
可可「かのんも初めてだと言ってマシたが、とてもそうとは思えないくらい絶品で……ほんとうに美味しかったデスよ!」
可可「ま! かのんのナポリタンはクゥクゥ専用メニューなんですケドネ!!」フフン
千砂都「へえー?」
すみれ「ふ〜ん?」
かのん「…………」
かのん「クゥクゥちゃん、ちょっと」チョイチョイ
可可「はーい、なんデスかーかのん」トテトテ
かのん「……」ポカッ
可可「あぃたあ……」
かのん「本日晴天、空は快晴、雲行きに異常なし。お日様サンサンサニーパッション」
可可「か、かのん…? 頭でも打ちマシたか……?」
かのん「いやーこんな日にナポリタンなんてノスタルジーな食べ物はあまり似合わないかもしれないなー、うん」
可可「へ?」
かのん「絶好の運動日和だよね、こんなに晴れ渡っているんだから」
かのん「クゥクゥちゃんも走りたくてたまらないだろうし、ね?」
可可「い、いえクゥクゥは別に」
かのん「なになに? 皆に負けてられないからドンと来やがれデス?」
かのん「いやークゥクゥちゃんの熱意には負けちゃうなー本当に!」
可可「いや、あの、かのん」
かのん「大丈夫! 遠慮しなくていいから! ほんと!」
かのん「私にはちゃんと分かってるから! クゥクゥちゃんの気持ち!」
かのん「だって私たちはクーカーを越えてもはやツーカーだもんね!」
可可「かの」
かのん「ちぃちゃーん、クゥクゥちゃんだけ特別に今日の練習足しといてー」
かのん「特別に、ね」
千砂都「……かしこまり」
かのん「じゃそういうことで」
可可「……あのー」
すみれ「良かったわね、特別扱いされて」ポン
千砂都「幸せが人一倍なら、苦労もまたひとしおってことだね。ま、頑張って」ポン
可可「……泣いてもいいデスか」
かのん「かぁー」
……
それからそれから
かのん「…………そろそろ、かな」
かのん「お母さーん、私ちょっと外れるねー」
カランカラン
可可「かのん!! いマスか!!」
かのん「今日は早かったからね、誰かさんと比べて」
可可「ええおかげサマで!」
可可「ほんと誰かさんのご指示でいつもの2倍は疲れた気がしマス!」
かのん「へえ〜、そんなに疲れたならさぞやお腹も空いてるんでしょうね」
可可「それはもう! 好きなものでも食べなきゃやってられねーデスよ!」
かのん「はいはい、それじゃご注文でもお聞きしましょうか」コトン
可可「特別サービスでお願いしマスね」
かのん「お得意様になってからね」
ジュワッ
秋は夕暮れ、人は気まぐれ。
今日も今日とてたずねてみれば、勝手知ったる言の葉と
切り捨てられない微笑み浮かべ、佇む姿はまさに女狐。
ジャッジャ
その声色に纏い張りつく、憎らしいほどの幼気に
なおも振り回される私の穏やかならない心中と、この胸に芽生えた溢れんばかりの情熱を
いったい誰が推し量れるというのだろうか。
かのん「…………なんてね」
ジャッ
ゆえに色濃く染めてゆく、夕焼け小焼け、焦げても多少はご愛嬌。
これもまた風情なり。
可可「 かーのーんー まだデスかー まちくたびーれーてー 」
可可「 クークー おーなーかーの ねがなるのーデースー 」
可可「 はーやく はーやくーと かーのーんを よ ぶ の 」
可可「 はーやく はーやくーと よーぶーんーデースー 」
かのん「お客さま、鼻歌での催促は受け付けておりません。ご遠慮ください」
可可「むー、なかなかの完成度だと思ったのデスが…」
可可「かのんのお気には召さなかったみたいデスね」
かのん「おかげさまで。というわけではい」
コトン
かのん「手加減知らずのナポリタン、お待ちどおさま」
可可「おぉー待ってマシた! これデスよこれ!」
かのん「お気に召すかどうかは分からないけどね」
可可「そんなのは言うまでもありまセンね」スンスン
かのん「あ、そですか。それはそれは」
可可「あぁ、いい焼き加減デスねえ……湯気に乗って香ばしい匂いがほら、こんなにも」
かのん「それはどうも。お褒めに預かり至極光栄にございます」
可可「ふふっ。ねえかのん」
かのん「なに?」
可可「今日はとってもいい天気デスね」
かのん「……さてと、空気の入れ替えでもしますか」スタスタ
可可「う〜〜〜〜ん、好吃〜!!」
かのん「いい天気……か」 スッ
ガラガラガラ……
かのん「本当にね。いやいや全くもって」
かのん「──いい空模様だなあ」
カァー カァー
終わりです、ありがとうございました。
とても良いテンポと雰囲気でした
イラストもかわいすぎる
スバラシイクーカーノハナシでした
また気が向いたら書いておくれ
台詞回しやら雰囲気やらが他のssと全然違うな
でも不思議とキャラ崩壊してる感じがしない
イラストまでありがたやありがたや。クーカー供給してくれて
lud20250214182620このスレへの固定リンク: http://5chb.net/r/lovelive/1633691530/
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