>>32 イントロが始まり、エース齋藤飛鳥の歌い出しからメンバーはひとつになった。これまでの乃木坂らしさをしっかりと踏襲しつつ、独自のエモーショナルさを付け加えたタカの見事過ぎる曲にエース齋藤飛鳥を中心に、メンバーそれぞれのパフォーマンスが呼応して、一体となって昇華していく。正に乃木坂の真髄と言えるパフォーマンスだった。
曲が終わった余韻の中、メンバーの誰もが例えこれで新生乃木坂に負ける事になってももはや悔いはないと感じていた。
しかし次の瞬間、ここで皆様に発表がありますと齋藤飛鳥が一歩前に。
私、齋藤飛鳥は今回のシングルの活動を持ちまして乃木坂46を卒業します。
自身のグループ卒業を発表したのだ。
唖然とするメンバー。司会のタモリや他のアーティスト達も同様に言葉を失った。
ひとり全てを悟った秋元真夏だけがその場に泣き崩れた。
そう、齋藤飛鳥は自分が卒業することで売上を伸ばし勝つことで、今まで自分が愛してきた乃木坂を守ろうと決意していたのだ。
あまりの事にリアクションも取れないメンバー達。
ひとりマイクを置いて立ち去ろうとする齋藤飛鳥。
その時。
「待ってください、飛鳥さん」静まり返るスタジオに響く声。
振り返ったその声の先にいたのは、岡本とアルノの二人。
「飛鳥さんを卒業させるわけにはいきません」
と続ける二人。
齋藤飛鳥を始めスタジオの誰も事態を飲み込めないままでいると、スタジオの角で見ていた秋元康が
齋藤飛鳥をはじめとするメンバーの前に進み出た。
全部彼女達と僕が仕掛けた芝居なんだよ。
そう秋元康は語り始めた。
アルノと岡本は自分達の騒動で乃木坂のイメージを壊し人気の凋落を招いているのではと苦しんだ二人は、自分達の手でどんなことをしても乃木坂の人気を回復させて責任を取ろうと決意し秋元康に相談していた。二人の覚悟を知った秋元康は、以前から構想を練っていたアイドルグループの戦いの物語を
ベースに、岡本とアルノそして自らも乃木坂の敵対勢力にする事で、対立構造を作りメディアや世間を煽り乃木坂完全復活のシナリオを創ったのだった。
星野も松村も、洗脳されていたアンダーメンバーも秋元康の協力者だった。
正にシナリオ通り乃木坂の人気はピークを越える勢いで回復していた。
「これであとは私達が活動辞退すればシナリオは完成します。だから飛鳥さんは卒業しないで下さい」泣き崩れる岡本とアルノ。
すると齋藤飛鳥は泣き崩れてる二人の頭にコツンコツンと優しくゲンコツを落とすと
「後輩のクセに生意気言ってんじゃないよ、誰が何と言おうとあんた達はとっくの前から乃木坂の私の仲間なんだから、勝手に辞退こそできると思うなよよ」
と二人に素っ気なさげに声をかけると笑顔で二人を抱きしめた。齋藤飛鳥の腕の中でごめんなさいごめんなさいと繰り返す岡本とアルノ。
「きっと君はそう言うと思っていたよ」と秋元康。
「そこまでシナリオ通りだったんですか?」と秋元康を睨む齋藤飛鳥。
ぼる塾の田辺さんばりの「まぁねぇ」を決める秋元康。
気がつけば岡本とアルノを抱擁する齋藤飛鳥を中心に乃木坂全員が抱き合って泣いていた。
スタジオは全ての出演者とスタッフの拍手が鳴り止む事はなく番組は幕を閉じた。
番組終了後SNSは乃木坂の話題一色でパンク状態だった。その中には当たり前に、乃木坂ファンを公言してやまないタレント武井壮の「やっぱ乃木坂だなぁ」の呟きが含まれていたのは言うまでもないが。
ただ彼はまだ知らない。その一時間後にはガーシーこと東谷のYouTubeチャンネルで自身に爆弾が落とされる事を。
完
まで想像できたわ。もしこれ全部読んだひといたらあんたも暇ですな。ワイのが暇ですがの、さようなら。