感謝状を受け取った浜中豊さん(左から2人目)と、容疑者を発見した神谷涼平巡査(左)=東京都福生市の福生署で2019年4月11日9時1分、佐久間一輝撮影
警視庁福生署は11日、特殊詐欺の「受け子」の逮捕に貢献したとして、東京都檜原村に住むタクシー運転手の浜中豊さん(70)に感謝状を贈呈した。
タクシーに乗車してきた男の不審な行動に「ピンときた」という浜中さん。鋭い観察眼が容疑者逮捕につながった。
浜中さんは8日午後、あきる野市のJR武蔵増戸駅近くで、スーツ姿にマスクをつけた若い男を乗せた。男は日の出町内の住宅の住所を告げたが、土地勘はない様子だった。
目的地に着いた男は車を待たせたまま住宅に向かい、数分で戻り、今度はコンビニに向かうよう指示してきた。
「何かおかしい」。浜中さんが車内から様子をうかがっていると、男はおもむろに帽子をかぶり、現金自動受払機(ATM)を操作し始めた。浜中さんは直感した。
マスクや帽子は顔を隠すためではないか。
男は特殊詐欺の受け子ではないか。浜中さんはJR秋川駅で男を降ろすと駅前の交番に駆け込んだ。
男は駅のホームで警察官に任意同行を求められた。靴の中にだまし取ったキャッシュカードを隠していたことなどから、詐欺容疑で逮捕された。
男は東久留米市前沢の無職、須藤陸容疑者(20)で、逮捕容疑は銀行員を装って「健康保険の還付がある」「キャッシュカードの再交付が必要」などとうそをつき、日の出町内の高齢夫婦からカード2枚をだまし取ったとしている。
須藤容疑者は夫婦から暗証番号も聞き出していたが、現金を引き出せなかったという。
特殊詐欺グループは電話で被害者をだますと、現金の引き出し役の受け子を派遣する。受け子は土地に不慣れなため、タクシーに乗ると、スマートフォンなどを操作しながら目的地の住所を指定することが多い。
このため、警視庁は交通各社に不審な客への注意喚起を行っている。浜中さんは「普通の行動をしただけ。交番ですぐに対応してくれ、うまく連携できた」と話した。【佐久間一輝】
https://mainichi.jp/articles/20190411/k00/00m/040/139000c