神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)や理化学研究所多細胞システム形成研究センター(同)などのチームは18日、他人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)で作った網膜の細胞を移植する世界初の臨床研究で、
移植した5人全員の網膜下で細胞の定着が確認されるなど経過が良好であることを明らかにした。詳細な術後経過の公表は初めて。
理研の高橋政代プロジェクトリーダーが18日、東京都内であった日本眼科学会総会で報告。高橋氏は「細胞がいずれも定着し満足している。視力低下を防ぐ点でも有効だ」と成果を強調している。
臨床研究では、同病院と同センター、大阪大病院、京都大iPS細胞研究所でつくるチームが、網膜が傷んで失明の恐れがある「滲出型加齢黄斑変性」の患者5人を対象に、2017年3月から10月までに移植手術を実施した。
拒絶反応が起きにくい免疫型を持つ人から採取した血液を基に、京都大が作製し備蓄しているiPS細胞を使用。患者本人の細胞から作るiPS細胞を使うより準備期間が短く、費用も安くなる利点がある。
理研がこのiPS細胞から、網膜細胞を製造した。移植手術では、この細胞約25万個を含む溶液をそれぞれ、兵庫県の男性を含む患者5人の目の網膜内側に注入している。
高橋氏は発表で、移植した細胞の定着が全員で確認できたとした。手術後、1人の網膜に薄い膜ができ、入院手術が必要な「重篤な有害事象」となったが、「手術法が要因で、iPS細胞によるものではない」と説明。
また別の1人で軽度の拒絶反応が出たが、「わずかに水が出た程度。局所的な対応で抑えられた。今回の研究で、安全性は担保できた」とした。
高橋氏は「治療の実用化に向けて7合目まできた。今後は効果などを研究で探っていく」と述べた。(篠原拓真)
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