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「性的関係いらない」が伝わらず アセクシュアルの悩み
恋愛的感情の有無にかかわらず、誰にも性的にひかれることがない「アセクシュアル」の人たちがいます。性のあり方の一つですが、まだあまり知られておらず、孤独感にさいなまれる人もいます。
否定され続けた
出版社で働く和泉(いずみ)直さん(31)はアセクシュアルで、自分を男性とも女性とも思わない「Xジェンダー」。「女性でいなきゃ」と長く苦しみました。
小学生の時から「女子」ではない、かといって男子とは見てもらえないらしい、と感じていました。「仲良くなりたいけど恋愛感情じゃない」と話しても「それは好きってことだよ」と気持ちを決めつけられる。
恋愛感情を学ぼうと男性とつきあってみた時は何も恋人らしいことができず、周囲に「相手がかわいそう」と言われて別れました。
大学では、男の先輩に交じって夜通し家で飲んだり雑魚寝したりしていると「お前、この状況はうちの部活じゃなかったら襲われてるからな」と言われ、混乱しました。男友達と気軽に話すとその恋人で私の友達でもある女性から無視されたことも。
世の中は男と女で分かれていて、異性愛が前提で、恋人という肩書が付いたら周りは遠慮するもので。大変な世界だと思いました。
男女関係のセオリーに自分を合わせようと、交際に踏み切った男性は、「彼女」になった途端キスをしたり体を触ったりしてきました。「腕の産毛をそれ」と言われたり、料理や掃除といった「彼女らしさ」を求められたり。苦しくても「これが社会」と言い聞かせましたが、半年が限界でした。
「いい人と出会っていないだけ」「検査した方がいい」……。多くの当事者が周りから様々なことを言われてきました。交流会や情報発信の取り組みも始まっています。
「性的な欲求がない」と言うと、「精神的に未熟」「性的虐待を受けたの?」「俺が教えてあげるよ」など、たくさんの否定をぶつけられます。でも、こうして目の前にいるんだからあり得ないわけがない。
Xジェンダー、アセクシュアルを知ったのは大学4年の頃。卒業後、性的少数者らが集まる舞台公演に参加して、初めて自分らしくいられる友達ができました。飲み会でも「女性性」を求められない。
男同士のように過ごしたかった学生時代を取り戻させてくれる仲間と過ごす中で、いま一緒に暮らす男性と出会いました。
彼は異性愛者ですが、性別の前に「人」として私を見てくれた。それまでの経験から「ずっと仲良く一緒にいるには彼女にならないと許されない」と思い込み、女性性も性行為も引き受ける覚悟で「家族になろう」と伝えましたが、彼は私を丸ごと受け入れてくれました。
一方、絆が深まれば恋愛感情や性的欲求が生まれるものかと期待したけど、そうではなかった。私はやっぱりアセクシュアルなんだとわかりました。
「他の人としてもいいんだよ」と言うと、彼はきょとんとして「必要ないよ」。かつての「恋人」には、性行為を嫌がると逆ギレされました。「させてあげないのはかわいそう」と言われたことも。「恋人なら応じるもの」という「普通」にみんな、とらわれなくてもいいのでは。
おいしいご飯を食べて「幸せだね」と言い合うのが、私たちにとっての愛情表現。彼と過ごして5年、思い込まされていた常識を一つひとつ、ほどいてもらえた気がしています。
まず存在知って
中村健さん(23)はアセクシュアルについて情報発信したり、自ら交流会を開いたりしています。
中学生の時、女友達から「つきあって」と言われ、買い物につきあうことだと思って応じました。数カ月後、その子は離れていきました。友達から「恋人なのに関係が進展しないのはおかしい」と言われました。みんながいう「恋愛」という感覚が、自分には分からない。孤独感をつのらせました。
高校時代は、周りが恋愛話や下ネタで盛り上がるたび、いつ自分に話を振られるかとおびえていました。「そういうことは考えていない」と伝えても理解されず、バイト先では「恋愛感情がないなんて人間じゃない」とも。「人として何か欠けているのかな」と思いつめました。