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パチンコ大国のカジノ
米国ラスベガスのカジノをのぞくと、客の多くはテーブルゲームではなく、スロットマシンに興じている。1回25セントとか5セントの台まである。パチンコ屋すらほぼ存在しない米国では、ギャンブルが合法化されている数少ない場所を訪れることは、いわば非日常体験なのだが、本格的なギャンブルよりも手軽なスロットマシンの方が圧倒的に人気だ。
でも日本なら、これは近所のパチンコ屋で十分。わざわざカジノに足を運ぶとは考えにくい。恐らく政府は、近隣諸国からの観光客を当てにしているのだろう。だが、実はこれこそが「賭け」だということを私たちはどれほど自覚しているだろうか。
韓国人観光客の激減が如実に物語るように、外国人客は対外関係に左右されやすい。地震や自然災害も日本では少なくない。それでも外国人頼みの娯楽施設で稼ごうというのなら、綿密な計画と戦略が必要なはずだ。
リゾート施設で経済活性化というアイデアは、バブルの頃にもあった。だが、その頃に造られた施設のどれほどがバブル崩壊後も生き残っているだろう。その苦い経験を基に、近隣諸国の経済成長が今以上に鈍化しても集客できるリゾートのコンセプトは練られているのだろうか。それに、近隣諸国からの集客を確実にするための良好な外交関係を維持する戦略も、どれほど具体的に描けているのだろう。一方で、自然災害の観光への影響を防ぐ対策は、果たして進んでいるのか。
パチンコ大国におけるカジノによる観光振興は、過去の教訓に学び、多方面の政策の連動性があって初めて現実味を帯びる。そこを徹底的に詰めることなしに見切り発車するなら、それこそギャンブルだ。