●「画廊内での禁止事項」を公表
そこで作成したのが、ツイッターで2020年7月に公表した「画廊内での禁止事項」だった(
https://twitter.com/gallery_kujira/status/1278201825888354305 )。
「悲しいことに、近年様々な展覧会場で、在廊中の作家さんをターゲットとした迷惑行為が散見されます。
作家さんの安全を守ることは画廊の責任であると私たちは考えます。
法律家の知人と相談の上、方針を定めました。情勢を踏まえ、少々厳しめにいきます」
として、次のような行為を禁止した。
・在廊する作家さんと二人きりになろうとする
作家さんの安全面から店主も同空間に必ずいるようにしています。万一お客さんが作家さんと二人きりを望み、それを作家さんが望まない場合はその時点でお帰りいただくことをお願いする場合がございます。
・作家さんにプライベートなお誘いをする
食事やドライブなどプライベートな誘いを作家さんにすることをくじらのほねでは禁止しております。
・作家さんに執拗に連絡先を尋ねる
個人的な連作先を作家さんから聞き出そうとする行為はくじらのほねでは禁止しております。
これら以外にも、作家への被害がある場合は退去を求めること、退去に応じない場合は不退去罪にもとづいて警察に通報することなどを明記。作品を購入したことを理由に行為に及んだ場合は、売約を取り消することも書いた。
●被害者は泣き寝入りの「ブラックボックス」
この対策はツイッターで広まり、共感を集めた。「自分も作品購入したからといって、連絡先を求められたことがある」「イベントブースでずっと自分の話をして帰らない人がいた」などと被害を打ち明けたり、賛同する人たちもいた。
飯田さんは「主催者が企画画廊の場合、安全管理の責任は画廊側にある」と考えている。だから、その感覚でツイートしたところ、反響があったことに驚いたという。
「当たり前のもとを明文化しただけなのですが、『よく書いてくれた』とツイッター外でも反響がありました。それで、自分が書いたことは美術業界では珍しいことだったんだなと思いました」
飯田さんによると、ギャラリーストーカーや、作家へのハラスメントは必ずしも、客から作家に対してとは限らないという。先輩の作家が後輩の作家に対してすることもあれば、ギャラリーが作家に対してするケースもある。
「日本の美術業界の作家さんは、音楽のアーティストと違って事務所に所属することがなく、作家活動しようとすると否応なくフリーランスになることが多いです。そうすると、誰も守ってくれない弱い立場に置かれてしまいます。
私の周囲でも、ハラスメントが起きても『美術業界だから仕方ない』といって、美術という言葉が免罪符になっていることがあります。そうして被害にあった作家さんが泣き寝入りするケースが本当に多いです。
美術業界自体が、すごい狭いブラックボックスになってしまっている状態だと思います。ほかの業界で同じことをしたら、訴訟沙汰になるようなことも少なくありません」
そうした中、飯田さんの取り組みは、少しでも安心して作家が創作活動をおこなえる環境を整えたいという思いからだという。くらじらのほねでは、画廊のオープンから約1年、大きなトラブルもなく、作家たちの企画展が開かれている。
「ストーキングやハラスメントによって、筆を折ってしまう作家さんもいると聞いたことがあります。本当に、せっかくの才能がもったいないです。画廊が作家さんを守るような取り組みが広がってほしいと思っています」
https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account)