発達障害との狭間「境界知能」の生きづらさ【医師が解説】
知的障害にはあたらず、支援も受けられないが、生きづらさを抱えている…。自身が「境界知能」である事実を、大人になってから知る方も多いと言います。あまり知られていない「境界知能」について、精神科医の岡田夕子氏が解説していきます。
(中略)
知能指数(IQ)とはなにか
まずは知能指数(IQ)について説明しておきましょう。(中略)
IQは100を中心に正規分布を示します。IQ85–115の間に約68%の人が収まり、IQ70–130の間に約95%の人が収まります。ですから、160というのは95%から外れた異常値になります。ただ、高い方の異常値は基本的に困ることはないですよね。
では、70以下の人はどういう扱いになっているでしょうか。
「知的障害」に該当すれば、支援を受けられるが…
彼らは「知的障害」に該当する可能性があります。数値によって「最重度・重度・中等度・軽度」と分かれ、療育手帳という手帳をもらい、支援学級や支援学校などを利用することができます。
支援学校では就労支援や障害者雇用、就労のための実習など、手厚い支援を受けられます。
今日、問題として挙げたい「境界知能」の人とは、IQ70〜85程度にあたる、異常値ではないけれども数値的には全体的に低い人たちのことです。
彼らは、知的障害にはあたらないので普通学級で過ごします。みんなが80点、90点を当たり前のようにとっていくテストで30点、40点をとり、どれだけ努力してもその差は埋まることはありません。
しかし「境界知能」についての理解が一般的に浸透していないこともあり、「勉強ができないやつ」といった烙印を押されてしまいます。
普通学級で小さくなって過ごすことになるかもしれませんし、いじめの対象になってしまうこともあります。
「境界知能」の方たちにとって、支援なしに小学校の授業を理解するのは難しいことです。テストの点数が悪いことに自尊心を傷つけられていきます。
「境界知能」における3つの問題点
ここでの問題点として、次の3つが挙げられます。
(1)療育手帳をもらえず、支援の対象となりにくい
最近は「境界知能」の子でも支援学級を使える場合がありますし、発達障害や二次障害などが重なっていくと、いずれ「精神障害者手帳」を取得することはできるかもしれません。
しかし療育手帳がないと、高等支援学校の入学資格は得られません。専修学校などの選択肢もありますが、就職において一番サポートが手厚いのは高等支援学校です。
生きづらさを感じていても支援が受けられず、社会的に孤立してしまうことがあります。
(2)「普通の人」の中で「普通の人」として働くことで不適応を起こす
小学校において、成績が下位15%にあたった「境界知能」の人たちが一般就労をすると、どうなるでしょう。
他の人と同じ結果、同じ能率を求められたらなかなか難しいと、想像がつくのではないでしょうか。仕事でつらい思いをしたり、叱責を受けたりして精神を病んでしまう方も多くいます。
「がんばっているのに…」劣等感を抱く
(3)自分に自信が持てなくなる
彼らは常に成績下位15%として過ごしてきました。どうがんばっても下剋上することはできない…と感じてきたことで、「自分はできないのだ」「がんばっているのに」といった思いを必要以上に抱いてしまいます。自尊心を持てないと、人生を明るく楽しく過ごすことが難しくなります。
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